沈みゆくままに(楠石×月島)
俺はいつものように、楠石千里の部屋に上がりこんでいた。
不思議と落ち着くそこで、サッカー雑誌を眺めていた俺は唐突に。
押し倒されていた。
「 沈 み ゆ く ま ま に 」
見つめられるだけで顔が赤くなるなんて、どこの女子だよと情けなくなるが、
身体は驚くほど素直で、反応は従順で。
俺は、逃げられないでいた。
男だろうが女だろうが、好きな相手だからこその反応なんだろうけど、
相手に優位に立たれているせいか、素直に喜べない。
そんなことを考えている間に、千里の顔がかなり近くまで迫ってきていた。
低く、熱を孕んだ声が囁く。
「欲しい」
「ちょ、待て!」
「待てない」
冷たい唇に、言葉を封じられた。
「―ッン、ンぅ」
何て声出してんだ俺。畜生。でも。
やべぇ……気持ちよすぎる。
何も、考えられなくなる。
気づけば俺も、絡めていた。
どうしてこうも、この男の唇を求めてしまうんだろう。
俺の唇を無機質で冷たい指がなぞる。
ここで拒めば、無理強いはしてこない。千里はそういう奴だった。
優しいから選ばせてやるとー。
だが、その優しさは何よりの拷問で、俺を試しているかのようで、俺を追い詰める。
俺の本音を暴く。
「どうする?」
ゆるゆると。しかし、確実に追い詰められる。
「ん?」
「・・・んなのっー」
欲しいに決まってんじゃねーか。
身体は高揚してきて、心がより強く欲する。
大切にしてほしいとか、優しくして欲しいとか。そんな考えは一切浮かばない。
ただ、千里の指を口に招き入れる。
冷たいはずなのに、くわえた瞬間欲望が熱く吹き出した。
触りたい。ただ、楠石千里と言う男の体に触れたい。
「この指も全部俺のもんだ」
唇を離して、そう告げる。
幸せそうなその微笑みが、ストンーと心に落ち、刻まれた。
ああ、この顔。すげー好きだ。
男とか女とか、そんな問題じゃない。
こいつだから、きっと。
《memo》
立花君より頂いたSSでイラストを描いてしまいました。
私のツボだったところをいくつか挙げておきます。
・その優しさは何よりの拷問→心身すでに囚われて身動き取れないでいるから「拷問」なのですね。
嫌って言えるわけないのに「どうする?」ってあんた鬼か!(笑)
・千里の指を口に招き入れる。→言葉ではなく、行動で受け入れるってのが、なんというか、エロス。
・「この指も全部俺のもんだ」→と宣言するツッキーがいい。囚われつつとらえてます楠石を。
ではでは、ここまで見て下さり、どうもありがとうございました!
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